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名古屋地方裁判所 昭和50年(わ)286号 判決

本籍

名古屋市中区錦二丁目一、二〇四番地

住居

同市名東区照ケ丘九一番地

会社役員

早野昌生

昭和八年九月一二日生

本籍

名古屋市中区錦二丁目一、二〇四番地

住居

同市名東区藤ケ丘一六二番地 藤ケ丘市街地住宅四棟九〇二号室

会社役員

早野祐右

昭和一五年七月七日生

右両名に対する各所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官藤河征夫出席のうえ審理をして、次のとおり判決する。

主文

被告人早野昌生を懲役一年及び罰金一、五〇〇万円に、被告人早野祐右を懲役八月及び八〇〇万円に処する。

各被告人において、右罰金を完納することができないときは、金五万円を、それぞれ一日に減換算した期間当該被告人を労役場に留置する。

各被告人に対し、この裁判確定の日から各二年間、それぞれ右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人早野昌生、同早野祐右は兄弟の間柄であり、名古屋市中区錦二丁目一二番四号において、早野商店の商号で、呉服・婦人既製服卸商を共同経営し、昭和四六年分及び同四七年分における各収益については、右早野昌生がその六五パーセントを、同早野祐右がその三五パーセントを、同四八年分における収益については、右早野昌生がその六〇パーセントを、右早野祐右がその四〇パーセントを配分取得する旨定め、右割合に従つて各年分の収益を配分していたが、被告人両名は共謀のうえ、所得税を免れようと企て、現金売上の一部及び特定の得意先に対する掛売上並びに決算期においてたな卸商品の一部を除外し、以上の方法により得た利益を、右割合に従つて各被告人に配分し、金銭信託、貸付信託等を設定するなどしてこれを秘匿したうえ、

第一、 被告人早野昌生に関し、

一、 昭和四六年分の実際の総所得金額が四、〇八六万一、六五七円であり、これに対する所得税額が、一、六八一万八、二〇〇円であるのに、昭和四七年三月一三日名古屋市中区三の丸三丁目三番二号所在名古屋中税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が一、六二五万二、〇〇一円であり、これに対する所得税額が三〇三万六〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、もつて、不正の行為により正規の所得税額との差額一、三七八万七、六〇〇円を免れ、

二、 昭和四七年分の実際の総所得金額が三、一〇七万一、六六九円であり、これに対する所得税額が一、四七九万八、八〇〇円であるのに、昭和四八年三月一五日前記税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が九八四万五、五六八円であり、これに対する所得税額が二八七万二、〇〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、もつて、不正の行為により正規の所得税額との差額一、一九二万六、八〇〇円を免れ、

三、 昭和四八年分の実際の総所得金額が六、一六六万一、六二二円であり、これに対する所得税額が、三、四二一万四、四〇〇円であるのに、昭和四九年三月一五日前記税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が一、三六一万二、八一二円であり、これに対する所得税額が四七九万四、五〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、もつて、不正の行為により正規の所得税額との差額二、九四一万九、九〇〇円を免れ、

第二、 被告人早野祐右分に関し、

一、 昭和四六年分の実際の総所得金額が、一、七八二万三、八〇七円であり、これに対する所得税額が七三四万八、四〇〇円であるのに、昭和四七年三月一三日前記税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が四四八万三、六〇八円であり、これに対する所得税額が八六万一、九〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、もつて、不正の行為により正規の所得税額との差額六四八万六、五〇〇円を免れ、

二、 昭和四七年分の実際の総所得金額が一、六八〇万三、七九三円であり、これに対する所得税額が六六二万四、九〇〇円であるのに、昭和四八年三月一五日前記税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が五二五万五、三〇六円であり、これに対する所得税額が一〇四万四、六〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、もつて、不正の行為により、正規の所得税額との差額五五八万三〇〇円を免れ、

三、 昭和四八年分の実際の総所得金額が四、一二〇万二、七四六円であり、これに対する所得税額が二、一〇五万七、九〇〇円であるのに、昭和四九年三月一五日前記税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が九〇四万一、八七三円であり、これに対する所得税額が二六一万九、一〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、もつて、不正の行為により、正規の所得税額との差額一、八四三万八、八〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一、第一回公判調書中の被告人両名の各供述記載部分及び被告人両名の当公判廷における各供述

一、被告人両名作成の各上申書

一、被告人早野昌生作成の上申書、同人に対する大蔵事務官の各質問てん末書及び同被告人の検察官に対する供述調書

一、被告人早野祐右に対する大蔵事務官の各質問てん末書及び同被告人の検察官に対する各供述調書

一、大蔵事務官作成の各現金有価証券等現在高確認書

一、今枝文雄、高橋武雄、佐々木一晃、伊藤松郎、加納悟、青山克忠、川橋孝雄、渡辺信、松平邦敬、林高明、榎本誠志、田上憲治、松村貢(昭和四九年七月一〇日付)、加藤光義、小野隆司、金森多計志、秋宏、岩本嘉七、近藤昭作成の各証明書

一、大蔵事務官作成の昭和五〇年一月一〇日付、同月一四日付各調査報告書及び生計費に関する調査報告書

一、小野隆司作成の上申書(「公社債利金及び投資信託収益分配金の支払について」のもの)

一、松岡仁作成の回答書

一、小室勝、西尾国衛、長沼輝男、安藤昭利、坂口博文、大山兵三郎、山本剛義に対する大蔵事務官の質問てん末書

一、大蔵事務官作成の各証明書(被告人両名の昭和四七年三月一三日、昭和四八年三月一五日、昭和四九年三月一五日付申告に関するもの)及び各脱税額計算書

判示第一、第二の各一、二の事実につき

一、山本剛義、社本みき江(昭和四九年六月二一日付)、小野隆司(「取引名義について」、「有価証券借入料の支払について」のもの)作成の各上申書

一、佐藤斉治に対する大蔵事務官の質問てん末書

判示第一、第二の各一、三の事実につき

一、和田正夫作成の証明書

一、橋本とよ子こと権渭出、岩月美智子に対する大蔵事務官の各質問てん末書

判示第一、第二の各一の事実につき

一、渡辺信孝、富田久市、松村貢(昭和四九年七月一一日付)作成の各証明書

一、小野隆司(「投資信託取得について」、「預り金について」のもの)、小塚吉計作成の各上申書

一、平湯秀人作成の回答書

一、荒井貢、竹内と、植田太三、渡辺トミ子に対する大蔵事務官の各質問てん末書

判示第一、第二の各二、三の事実につき

一、白石幸治、新原茂美、中村進、野崎光雄、四方清人作成の各証明書

一、佐久間正、小野隆司(「投資信託分配金未払分について」のもの)作成の各上申書

一、鈴木美代子に対する大蔵事務官の質問てん末書

判示第一、第二の各二の事実につき

一、玉置雅作成の上申書及び訂正上申書

一、三浦正彦作成の回答書

一、小関保、風岡善助、三浦正敏に対する大蔵事務官の各質問てん末書

判示第一、第二の各三の事実につき

一、栗田肇、金森多計志、岸本得三、柏原宣晃作成の各証明書

一、清水利弘、社本みき江(昭和四九年六月一八日付)、斉藤登美夫、小野隆司(「保護預り株式の名義人について」のもの)作成の各上申書

一、出宮太郎、大野勝慶、南貞雄作成の各回答書

一、石川周二、藤井弘安、高井皆吉、梅村初美、早川高、高野初枝、石川みよに対する大蔵事務官の各質問てん末書

一、大蔵事務官作成の昭和四九年一一月二〇日付調査報告書

(法令の適用)

一、判示各事実につき、各所得税法第二三八条、刑法第六〇条(各懲役刑及び罰金刑併科)

二、併合罪加重につき、各刑法第四五条前段、第四七条本文、第一〇条、第四八条第二項

三、労役場留置につき、各刑法第一八条

四、懲役刑の執行猶予につき、各刑法第二五条第一項

以上の理由により、主文のとおり判決する。

(裁判官 土川孝二)

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